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2010年03月24日

上高地撤退の顛末 - 1

所詮ブロガーなんて、職業欄に控えめな文字で「人柱」と記すしかない惨めなピエロだ。人様に笑われることでしか価値を示せない生き物だから、私としてはなんの恥じらいもなく、むしろ澄み切った青空のごとく晴れ晴れとした気持ちでこの無様なまでの山行を書き残そうとしている。もし子々孫々まで私の血脈が受け継がれたとして、ぜひ彼らにも知っておいてもらいたい。いかに君たちの中に、チキン野郎としての遺伝子が満ち満ちているのかを。

上高地撤退の顛末 - 1
もし世界に希望があるとすれば、それは釜トンネルの出口のことだ。
長い長い暗闇の釜トンネルを抜けると、そこは雪国であるはずだった。しかし路面にはところどころ雪が残るばかりで、ほとんどアスファルトがむき出しになっていて、背中に担いだMSR Shiftがずっしり重く感じられた。北アルプスは二回目。それも単独は初めて。きっと酷い目に遭うに違いない。とは思っていたが、まさかこんな形で裏切られるとは思ってもみなかった。

上高地撤退の顛末 - 1
ionを担いだ愚かしき人間、どうも様にならない。

上高地撤退の顛末 - 1
サルがいた。サルのブログには愚かな人間がいたと書いてあったろう。

上高地撤退の顛末 - 1
ご覧のように、路面上に雪はほとんどなかった。

13:50の松本発のバスに乗り、15時過ぎにハイクを開始し、17時前には小梨平に到着。ここにもやはり雪はない。テントサイトにはところどころ腐った雪が見えていたが、ブリザードステイクが果たして効くのかどうか、といった程度。今回の致命的なミスのうちの1つがこれで、ブリザードステイクが使えるとばかり思い込んでいて、使えなかった場合のペグを2本だけしか持ってきていなかったことだ。

上高地撤退の顛末 - 1
日中は日焼けが心配になるほどの快晴ぶりだった。

上高地撤退の顛末 - 1
雪解け水を得て勢いを増す梓川。

そしてもう1つのミスが幕体の選定で、どうせ担ぐのならば防寒着やシュラフを持ったほうがあたたかく眠れるだろうと思って、ハバHPのインナーを置いてフライとフットプリントしか持ってこなかった。たしかにこれで自立はするし、その代わりにダウンジャケットとダウンパンツに、♯4にトップキルトを収納することができたので、保温の面では特に問題なかったろう。この構成で、条件がよければ-10℃までなら安眠できるとの腹積もりだったし、それ以上になっても、まぁ、死ぬことはないだろうと思っていた。

さらに付け加えるなら、これが最も肝心な点であるかもしれないが、ペグ2本に石を適当に積み、サイドの二箇所も石を積んでおいただけで、他は木からガイラインを引くとかマージンは全く取らなかったことだ。人が寝ているのだから、飛ばされることはなかろうと高をくくり、計4点の支持だけであの低気圧をやり過ごせるとでも思ったのだろうか?思わなかった、いや、この人間の極めて愚かしきは、そこになんの考も持たないところにある。

21:00、就寝。翌1:00、強い風の音で目が覚めた。対岸の穂高方面から轟音が鳴り響く。梓川の下流からも吹き上げてきているようで、油断すると背後の焼岳からも吹き降ろしてきている。要するに間断なく全方面からの強風を浴び、しばらくすると雨も混じり始めた。2:00過ぎ、雨がより強く降り注ぎ、横風とともにテントの下の隙間から吹き込んでくるようだ。しかしテント内の気温は約4℃、シュラフがいらないほどあたたかで、状況を楽しむ余裕すらあった。危機感も悲壮感もなく、悠々とお茶でも飲もうかと湯を沸かそうと思ったときのことだ。2:34、穂高方向からの強烈な風とともに出入り口の1本のペグが抜け、石積みごと吹き飛ばされた。

バッサバッサとはためくフライをつかみ、急いでペグを打ち直そうにも、地面がぬかるんでなかなか刺さらない。3度、4度と角度を変えて、ようやく固定できてほっと一息つくのも束の間、敵は後ろからもやってくる。反対側のペグが抜け、直そうとするやいなや、先ほど直したばかりのペグも再びすっ飛んでいった。

私のハバはまさに鳥のように羽ばたこうとしていた。

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Posted by tori-bird at 02:29│Comments(10)NUL
この記事へのコメント
まだ3月だというのに雪がほとんど無いなんて・・・
それにしても気になる展開で、早く続きをお願いします!
Posted by チャイ at 2010年03月24日 06:05
わかります。わかりますよ、その恐怖。眠くて見て見ぬふりをするところなど、まるで我が身のように!
Posted by 2号 at 2010年03月24日 08:32
あぁ、僕がタープの四面から降り注ぐ豪雨をなかった事にして寝入っていたころの出来事ですね。続きを待ってますよ
Posted by roadman71 at 2010年03月24日 08:51
ニヤニヤがとまりません。
続きを楽しみにしております。
Posted by けんけん at 2010年03月24日 08:57
こんなwにwえらいことwwになっていたとはw知らず、ふざけたりしてwすみまwせんwでしたwww
Posted by kimatsukimatsu at 2010年03月24日 09:06
みんなこの日出掛けてて笑えるすね。せんべいを食べながら読んでます。興奮してきました!
Posted by badboykgeez at 2010年03月24日 09:14
ハバがハバたく。


…、いやオッサンじゃないですよ。
Posted by もりもり at 2010年03月24日 11:29
そうでしたか... あの前の晩は、飛ぶところだったんですね。なんというか、「たくま」の前で、とりさんが小さく見えてしまったのは、気のせいではなかったんだと思います。あとで写真送ります。
Posted by いまるぷ at 2010年03月25日 12:32
おぉ、鳥さんが飛んだぁ~~~

まだまだこれからが本番なんですね。
続きが楽しみです。

一人くらい飛んでくれ~~~~
Posted by 茶柱 at 2010年03月26日 15:30
今、上高地のテン場です。

無風です。

早く続きを〜
(*^ω^*)
Posted by jun(槍隊放題) at 2010年03月31日 02:20
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