2009年09月22日
北ア・ピークスルーハイク完了。
2009年09月18日
ブログ主はまたちょっと旅へ。
2009年09月14日
2009年09月08日
北海道ツーリング・ハイク(1日目・2日目)
彼女は土足で踏み込んできた。
もっともチャイムは壊れていたが、
ノックぐらいしてもいいだろうに、
履いていたサンダルを脱ごうともせず、
彼女はいきなり部屋に上がりこんできた。
授業の参考書だかなにかをまとめて手に取り、
私のいるテーブルのそばに鍵を投げてよこして、
「それじゃ、わかっているだろうけど、さよなら」
とだけ無感情に言い捨て、ドアを閉めて出ていった。
何か言い返す猶予すら与えてくれなかった。
たしかにその短い台詞の余韻を残さず立ち去るためには、
サンダルを履き直すコンマ数秒の時間でも惜しかったのだろう。
そこまで計算高い女だとは思わなかった。
すべての女が計算高い生き物だと知るようになるには、
それからさらにいくつかの失敗を重ねなければならなかった。
ああ、余計なことは語るまい。
彼女とは大学4年間のうち3年間をともに過ごし、
初めての北海道にも一緒に旅立ったのだった。
旅行に間に合わせるようにバイクの免許を取得した彼女は、
半クラも坂道発進もUターンもろくにできないにも関わらず、
買ったばかりの中古のエストレヤで、私の後をついてきたのだ。
「あんな汚いところ、泊まりたくない」
と、直截的に口に出したわけじゃない。
が、二年あまりも一緒にいれば、言われなくたってわかるものだ。
私は終始、むくれ顔になった。おもしろくなかった。
こう言うと、ひどい男だと思われるだろう。
私は一人で北海道を旅したくなった。
ライダーハウスやキャンプ場を泊まり歩き、
旅人との出会いにその後の人生に影響を与え、
私を開眼させる何かが待っているはずだと思ったからだ。
北海道は自由で開放的な大地などではなかった。
物々しい閂が通された、制約と束縛の牢獄だった。
それから一年後の夏も、彼女とは相変わらず続いていた。
しかし、今度は一人で北海道へ旅立ったのだ。
彼女には一言も告げずに。
逃避行の結末は、すでに述べた通りだ。
続きを読む
もっともチャイムは壊れていたが、
ノックぐらいしてもいいだろうに、
履いていたサンダルを脱ごうともせず、
彼女はいきなり部屋に上がりこんできた。
授業の参考書だかなにかをまとめて手に取り、
私のいるテーブルのそばに鍵を投げてよこして、
「それじゃ、わかっているだろうけど、さよなら」
とだけ無感情に言い捨て、ドアを閉めて出ていった。
何か言い返す猶予すら与えてくれなかった。
たしかにその短い台詞の余韻を残さず立ち去るためには、
サンダルを履き直すコンマ数秒の時間でも惜しかったのだろう。
そこまで計算高い女だとは思わなかった。
すべての女が計算高い生き物だと知るようになるには、
それからさらにいくつかの失敗を重ねなければならなかった。
ああ、余計なことは語るまい。
彼女とは大学4年間のうち3年間をともに過ごし、
初めての北海道にも一緒に旅立ったのだった。
旅行に間に合わせるようにバイクの免許を取得した彼女は、
半クラも坂道発進もUターンもろくにできないにも関わらず、
買ったばかりの中古のエストレヤで、私の後をついてきたのだ。
「あんな汚いところ、泊まりたくない」
と、直截的に口に出したわけじゃない。
が、二年あまりも一緒にいれば、言われなくたってわかるものだ。
私は終始、むくれ顔になった。おもしろくなかった。
こう言うと、ひどい男だと思われるだろう。
私は一人で北海道を旅したくなった。
ライダーハウスやキャンプ場を泊まり歩き、
旅人との出会いにその後の人生に影響を与え、
私を開眼させる何かが待っているはずだと思ったからだ。
北海道は自由で開放的な大地などではなかった。
物々しい閂が通された、制約と束縛の牢獄だった。
それから一年後の夏も、彼女とは相変わらず続いていた。
しかし、今度は一人で北海道へ旅立ったのだ。
彼女には一言も告げずに。
逃避行の結末は、すでに述べた通りだ。
続きを読む