2009年09月14日
北海道ツーリング・ハイク(3日目)

余計なお世話だ。
◆北海道ツーリング・ハイク3日目
オホーツク海には武装した一団が待ち受けていた。
宗谷岬を通過するころはまだ斥候部隊が
散発的な攻勢を仕掛けてくる程度であったが、
遠く稚内市街を望む宗谷湾には
彼らの掃討作戦網が展開されていた。
「見よ、あの貧弱なチャリダーを。
もはや死に体、首尾よく撃滅するのだ」
双眼鏡を構えた指揮官が野太い声で号令をかける。
彼らはじつに戦略的で、指揮系統に迷いはなく、
一兵卒に至るまで練兵されていた。
主砲は正面からの間断なき強風。
速く正確に重苦しく、私の体にぶち当たる。
まるでジェイムズヘットフィールドのギターリフだ。
規則的な水平射撃を受けた私の体は著しく消耗を始め、
疲弊した太ももでは筋肉の凝固が進行し、
軽量化されたはずのペダルにはずっしりと鉛がへばり付いていた。
ときおり現れる下り坂。
しかし、彼らは休ませてくれない。
強烈な向かい風は、下っていようがお構いなしに、
ペダルを踏まなければ前に進ませてくれなかった。
筋肉の疲労だけならまだいいが、
漕ぐたびにハンマーで叩かれるような鈍痛が
右膝を襲っていた。肉体は崩壊寸前だった。
「よし、そろそろ休ませてやれ」
永遠に続くかと思われた強風も束の間やむことがあり、
今がチャンスと勇んでギアをアウターに入れる。
ぐんぐんと加速し、スピードメーターは30km超を計測する。
いけるじゃないか。
この勢いで一気に稚内まで乗り込んでしまえ。
「今だ!!」
爆裂的な強風が正面から吹きすさぶ。
とたんにペダルが重くなり、
たまらずギアをインナーにシフトすると、
時速は10km前後へ急降下。
「ファァァァック!!」
と叫んだ私はあるいは発狂しかけていたのかもしれない。
深刻なダメージは精神衛生面にまで及んでいた。

恥も外聞も捨て、サドルにタオルをまく。
もう何度目の休憩か覚えていない。
なにか応援メッセージでもないかと、
iPhoneでお気に入りのブログを閲覧していたときのことだ。
これまでどんなに苦しくても、
最後の最後になるまで腹筋だけは温存していた。
足が死んでも腹に力を込めればなんとか踏める。
ほとんど願いに近い根拠だけで大切に残していたのだ。
ところが、まさか友軍の誤射により、
虎の子の腹筋を失う羽目になろうとは思いもよらなかった。

いまるぷさん、あなたが射抜いたのは味方の背中だ。
「ゲフッ」
鈍い炸裂音を立て、私の腹筋が破壊された。
そのあとにくる盛大な笑い声で、
デリケートな国境線を守るロシアの沿岸警備隊も敏感に反応したはずだ。
ああ、もうだめだ。
「オホーツク海に死す」
そんな見出しも悪くないなと思い始めていた。
そのとき、ウェストバックの中に、
アレが入っていることを思い出した。

コレだ。
旅立つ前、三鷹の某ショップへ立ち寄った。
店主の土屋氏が
「キツくてどうにもならないときに飲むとよい」
と餞別代わりにくれたものだ。
化学的な成分などはわからない。
でも、飲むとすぐに効いた。
ただ単にシャリバテだっただけかもしれないが、
私のためを想って持たせてくれた心意気に、
体は素直に反応した。
さすがリーダー。
メンバーのミスを帳消しにして余りある援護射撃だ。
相変わらずオホーツク海に陣取った一団からの攻勢はやまない。
しかし、蘇った活力をほしいままに躍動させる私を前に、
緻密に展開された包囲網にもついに綻びが見え始めた。
◆
これが北海道上陸三日目で味わったことの一部始終だ。
おっと、稚内市内でのあの苦闘のことを忘れていた。
それは次回に取っておこう。
思い出しただけでもうクタクタなのだから。
つづく。
オホーツク海には武装した一団が待ち受けていた。
宗谷岬を通過するころはまだ斥候部隊が
散発的な攻勢を仕掛けてくる程度であったが、
遠く稚内市街を望む宗谷湾には
彼らの掃討作戦網が展開されていた。
「見よ、あの貧弱なチャリダーを。
もはや死に体、首尾よく撃滅するのだ」
双眼鏡を構えた指揮官が野太い声で号令をかける。
彼らはじつに戦略的で、指揮系統に迷いはなく、
一兵卒に至るまで練兵されていた。
主砲は正面からの間断なき強風。
速く正確に重苦しく、私の体にぶち当たる。
まるでジェイムズヘットフィールドのギターリフだ。
規則的な水平射撃を受けた私の体は著しく消耗を始め、
疲弊した太ももでは筋肉の凝固が進行し、
軽量化されたはずのペダルにはずっしりと鉛がへばり付いていた。
ときおり現れる下り坂。
しかし、彼らは休ませてくれない。
強烈な向かい風は、下っていようがお構いなしに、
ペダルを踏まなければ前に進ませてくれなかった。
筋肉の疲労だけならまだいいが、
漕ぐたびにハンマーで叩かれるような鈍痛が
右膝を襲っていた。肉体は崩壊寸前だった。
「よし、そろそろ休ませてやれ」
永遠に続くかと思われた強風も束の間やむことがあり、
今がチャンスと勇んでギアをアウターに入れる。
ぐんぐんと加速し、スピードメーターは30km超を計測する。
いけるじゃないか。
この勢いで一気に稚内まで乗り込んでしまえ。
「今だ!!」
爆裂的な強風が正面から吹きすさぶ。
とたんにペダルが重くなり、
たまらずギアをインナーにシフトすると、
時速は10km前後へ急降下。
「ファァァァック!!」
と叫んだ私はあるいは発狂しかけていたのかもしれない。
深刻なダメージは精神衛生面にまで及んでいた。

恥も外聞も捨て、サドルにタオルをまく。
もう何度目の休憩か覚えていない。
なにか応援メッセージでもないかと、
iPhoneでお気に入りのブログを閲覧していたときのことだ。
これまでどんなに苦しくても、
最後の最後になるまで腹筋だけは温存していた。
足が死んでも腹に力を込めればなんとか踏める。
ほとんど願いに近い根拠だけで大切に残していたのだ。
ところが、まさか友軍の誤射により、
虎の子の腹筋を失う羽目になろうとは思いもよらなかった。

いまるぷさん、あなたが射抜いたのは味方の背中だ。
「ゲフッ」
鈍い炸裂音を立て、私の腹筋が破壊された。
そのあとにくる盛大な笑い声で、
デリケートな国境線を守るロシアの沿岸警備隊も敏感に反応したはずだ。
ああ、もうだめだ。
「オホーツク海に死す」
そんな見出しも悪くないなと思い始めていた。
そのとき、ウェストバックの中に、
アレが入っていることを思い出した。

コレだ。
旅立つ前、三鷹の某ショップへ立ち寄った。
店主の土屋氏が
「キツくてどうにもならないときに飲むとよい」
と餞別代わりにくれたものだ。
化学的な成分などはわからない。
でも、飲むとすぐに効いた。
ただ単にシャリバテだっただけかもしれないが、
私のためを想って持たせてくれた心意気に、
体は素直に反応した。
さすがリーダー。
メンバーのミスを帳消しにして余りある援護射撃だ。
相変わらずオホーツク海に陣取った一団からの攻勢はやまない。
しかし、蘇った活力をほしいままに躍動させる私を前に、
緻密に展開された包囲網にもついに綻びが見え始めた。
◆
これが北海道上陸三日目で味わったことの一部始終だ。
おっと、稚内市内でのあの苦闘のことを忘れていた。
それは次回に取っておこう。
思い出しただけでもうクタクタなのだから。
つづく。
Posted by tori-bird at 21:27│Comments(18)
│09北海道
この記事へのコメント
お・・・これはshotz!
山野井さんが愛用しているのと同じもの!
山野井さんが愛用しているのと同じもの!
Posted by ユウ_zetterlund at 2009年09月14日 21:40
おぉぉ、あの時のお守りがしっかりと役に立ったのか!
これはもぅ、お礼しに行かねばだわね。
もちろんあの時連れて行ってくれた優しいオニイサマにもお礼が必要かと。
これはもぅ、お礼しに行かねばだわね。
もちろんあの時連れて行ってくれた優しいオニイサマにもお礼が必要かと。
Posted by いのうえ at 2009年09月14日 21:43
おおお。
みごとにじょりりんちょすなさった、
その証かと承りました!
みごとにじょりりんちょすなさった、
その証かと承りました!
Posted by いまるぷ
at 2009年09月14日 22:24

>ユウさん
おおおーそうだったんですか。
これ効きますよー。
味も「きなこ風味のハチミツ」って感じで、
疲れた体でも抵抗なくちゅるちゅるできました。
ユウさんのとこで紹介されてるやつもチェックしてみます。
おおおーそうだったんですか。
これ効きますよー。
味も「きなこ風味のハチミツ」って感じで、
疲れた体でも抵抗なくちゅるちゅるできました。
ユウさんのとこで紹介されてるやつもチェックしてみます。
Posted by tori-bird
at 2009年09月15日 01:53

>いのうえさん
ほんとですよ。
「これはオニギリです」
と言い切られたのが忘れられませんです。
ヤサシイオニイサマ・・ヤサシイオニイサマ・・・
外国語はちょっとよくわからないのですみません。
ほんとですよ。
「これはオニギリです」
と言い切られたのが忘れられませんです。
ヤサシイオニイサマ・・ヤサシイオニイサマ・・・
外国語はちょっとよくわからないのですみません。
Posted by tori-bird
at 2009年09月15日 01:56

>いまるぷさん
これだけ無礼極まりないエントリーを上げておきながら、
じょりりんちょすだけで許してもらえるとは!
なんと寛大な御心でしょう。
仰せつかった通り、しっかり剃り上げておきましたよ。ヒゲを!
これだけ無礼極まりないエントリーを上げておきながら、
じょりりんちょすだけで許してもらえるとは!
なんと寛大な御心でしょう。
仰せつかった通り、しっかり剃り上げておきましたよ。ヒゲを!
Posted by tori-bird
at 2009年09月15日 01:58

カーボショッツは僕が最も多用する補給食です。パワージェルより安いだけでなく、採りやすくフラスコなどへの詰め替えも容易。消化からエネルギーへの変換も早く感じます。好きなのはバナナ味とコーラ味。
Posted by roadman71 at 2009年09月15日 07:44
すでにroadmanさんが書いてますが、パワージェルはコストが高いです。
このカーボショッツが入手できるのであれば、こちらのほうがいいです♪
このカーボショッツが入手できるのであれば、こちらのほうがいいです♪
Posted by ユウ_zetterlund
at 2009年09月15日 10:55

>roadmanさん
ほほぉ。補給"食"ですな。
まさにという感じです。
土屋さん曰く、
オニギリより即効性があり、
ジェル系のものより持続力がある、
とのことでしたが、納得です。
そんなことよりコーラ味が気になります!!
長年の懸案だった山でのコーラ問題もついに解決か!!
ほほぉ。補給"食"ですな。
まさにという感じです。
土屋さん曰く、
オニギリより即効性があり、
ジェル系のものより持続力がある、
とのことでしたが、納得です。
そんなことよりコーラ味が気になります!!
長年の懸案だった山でのコーラ問題もついに解決か!!
Posted by tori-bird
at 2009年09月16日 00:37

>ユウさん
ここで言うのもなんですが、
私もじつは隠れカツ丼家でして、
「まずいカツ丼などない」
と豪語する方を見かけ、
少し危機感を覚えましたので、
「まずいカツ丼三箇条」
を唱えることにしました。
1.つゆが多すぎる
→自家製つゆに自惚れた蕎麦屋に多い傾向
2.グリーンピースがのってない
→●●のない●っ●●のようなものだ!と例えた偉人もいるとかないとか
3.カマボコの切れ端が入っている
→田舎のかーちゃんがやってる定食屋では半数以上に達するという統計もあるとかないとか
このように三箇条をきちんと守り、
上質な店だけを見極め、より良いカツ丼ライフを
エンジョイしていただきたいものです。
ここで言うのもなんですが、
私もじつは隠れカツ丼家でして、
「まずいカツ丼などない」
と豪語する方を見かけ、
少し危機感を覚えましたので、
「まずいカツ丼三箇条」
を唱えることにしました。
1.つゆが多すぎる
→自家製つゆに自惚れた蕎麦屋に多い傾向
2.グリーンピースがのってない
→●●のない●っ●●のようなものだ!と例えた偉人もいるとかないとか
3.カマボコの切れ端が入っている
→田舎のかーちゃんがやってる定食屋では半数以上に達するという統計もあるとかないとか
このように三箇条をきちんと守り、
上質な店だけを見極め、より良いカツ丼ライフを
エンジョイしていただきたいものです。
Posted by tori-bird
at 2009年09月16日 01:13

こんばんは。
ほっとけ(w
まあその。ハラ減ってりゃ、なんでも美味いでしょ。
そんなレベルでお知りおき願います、はい。
ほっとけ(w
まあその。ハラ減ってりゃ、なんでも美味いでしょ。
そんなレベルでお知りおき願います、はい。
Posted by ラード at 2009年09月16日 01:27
>ラードさん
おお!丼をかっ込むごとくの食いつきの早さ!
あらゆることに柔軟な私ですが、
カツ丼に限ってだけは敏感なので、
どうかご容赦ください。
「かっぱ食堂」
その名前、しっかり記憶しておきました。
北ア縦走の折りには、必ずや立ち寄らせていただきます。
おお!丼をかっ込むごとくの食いつきの早さ!
あらゆることに柔軟な私ですが、
カツ丼に限ってだけは敏感なので、
どうかご容赦ください。
「かっぱ食堂」
その名前、しっかり記憶しておきました。
北ア縦走の折りには、必ずや立ち寄らせていただきます。
Posted by tori-bird
at 2009年09月16日 01:46

カツ丼に関してはご高説に納得しないこともないです。しかし
「まずいカツカレーなどない」
この命題は宇宙の真理です。絶対に譲歩できません。
「まずいカツカレーなどない」
この命題は宇宙の真理です。絶対に譲歩できません。
Posted by kimatsu at 2009年09月16日 08:33
え~~、ヒゲだけジョリンチョスですか・・・(屮゜Д゜)屮
そういえば、いつまで待っても塩ウニが届かないんですよ。
宅急便屋が忘れているんですかねぇ。
これだけのご苦労されたのなら・・・
さぞや北国で恥のかき捨てやってきたんでしょうな。ふっふっふ
そういえば、いつまで待っても塩ウニが届かないんですよ。
宅急便屋が忘れているんですかねぇ。
これだけのご苦労されたのなら・・・
さぞや北国で恥のかき捨てやってきたんでしょうな。ふっふっふ
Posted by 茶柱 at 2009年09月18日 15:31
風に悩まされたようですね。
わたしはカツ丼にはグリーンピースは無くてもいいです。山梨でカツ丼頼むとでてくるソースカツ丼も嫌いではないのですが、卵でとじているカツ丼がいいですね。
わたしはカツ丼にはグリーンピースは無くてもいいです。山梨でカツ丼頼むとでてくるソースカツ丼も嫌いではないのですが、卵でとじているカツ丼がいいですね。
Posted by nekopuu43 at 2009年09月18日 23:32
>kimatsuさん
カツカレーでインターハイに出場したとかの噂はかねがね
お聞きしておりましたので、カツカレーに関しては私も
不用意に発言できないとは思ってました。
が、カツカレーと一口に言いましても、
中にはチキンカツのチキンの部分を略して供す店があったり、
あるいはカツにうつつを抜かして肝心のカレーの部分が
おろそかになっているレストランなどもありますので、
引き続き油断せずカツカレーの王道を守っていきましょう。
カツカレーでインターハイに出場したとかの噂はかねがね
お聞きしておりましたので、カツカレーに関しては私も
不用意に発言できないとは思ってました。
が、カツカレーと一口に言いましても、
中にはチキンカツのチキンの部分を略して供す店があったり、
あるいはカツにうつつを抜かして肝心のカレーの部分が
おろそかになっているレストランなどもありますので、
引き続き油断せずカツカレーの王道を守っていきましょう。
Posted by tori-bird
at 2009年09月29日 00:11

>茶柱さん
あーそうそう。
送ったんですけど、戻ってきちゃったんですよ。
宅配の人に聞いたら、奥様がお受け取りになられたそうで、
「あの野郎、北海道にまで女つくりやがって!!」
って、投げ返されたらしいです。
恥は捨てても女は捨てきれず、ですか!
ほんとにいい加減にしてくださいよ。
あーそうそう。
送ったんですけど、戻ってきちゃったんですよ。
宅配の人に聞いたら、奥様がお受け取りになられたそうで、
「あの野郎、北海道にまで女つくりやがって!!」
って、投げ返されたらしいです。
恥は捨てても女は捨てきれず、ですか!
ほんとにいい加減にしてくださいよ。
Posted by tori-bird
at 2009年09月29日 00:21

>nekopuuさん
宗谷岬を回るまではまだましだったんですよ。
宗谷湾に入ったとたん、別次元でした。
聞くところによると、オロロンラインを走ってきたチャリダーは、
追い風でラクラクだったとか。
逆風な人生だと思い知りましたよ。
ソースカツ丼はカツ丼と名乗らないでいただきたいですね。
丼というのは全体の一体感があって初めて成立するものであって、
「ただ載せただけ」にも関わらず丼ぶるのが
どうも気に入りません。
まぁ、私も嫌いではないんですが。
宗谷岬を回るまではまだましだったんですよ。
宗谷湾に入ったとたん、別次元でした。
聞くところによると、オロロンラインを走ってきたチャリダーは、
追い風でラクラクだったとか。
逆風な人生だと思い知りましたよ。
ソースカツ丼はカツ丼と名乗らないでいただきたいですね。
丼というのは全体の一体感があって初めて成立するものであって、
「ただ載せただけ」にも関わらず丼ぶるのが
どうも気に入りません。
まぁ、私も嫌いではないんですが。
Posted by tori-bird
at 2009年09月29日 01:24

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