六郷土手と、ノルウェイと。
こんにちは。鳥です。
冒頭から全く関係のない話なのですが、私が先日、国道1号線沿いを自転車で走っていたときのこと。コンビニが見えたので一休みしようとグローブを脱いでいたら、「エクスキューズミー」と話し掛ける声を背後に感じた。何事かと振り返るとそこにいたのは白人の中年で、手に持った携帯電話を指差しながら私に向かって何かを説明している様子。もちろん英語だ。
私は決して人当たりが良いほうではないが、だからといって人から助けを求められるのは嫌いではない。ただその機会にめぐり合えないだけで、重たい荷物を抱えた老人が横断歩道で立ち往生していたなら「持ちましょうか?」と声をかけたいと思うし、「息子が!息子が!」と業火に包まれた家屋を指差し懇願している母親を見たなら、すぐさまバケツの水をかぶって飛び込むだろう。そして救い出した子どもを母親に差し出し、「かあちゃんを大事にしろよ」と告げて死ぬのだ。
しかしその中年の白人が不幸だったのは、このブログタイトルを知るみなさまならば今さら説明もいらないだろうが、私は
英語ができないのである。彼が何を言わんとしているのかわからないし、何がわからないのか説明する術も私は持たない。仕方なく無情に「アイムソーリー」と言って立ち去りかけたそのとき、彼の英語の中にはっきりと聞き取れる単語が耳に飛び込んできた。
「六郷ゴルフクラブ」
がそれである。要するに彼は「六郷ゴルフクラブ」に向かおうとして道に迷ってしまったところだったようで、見れば携帯電話のモニターにも英語の住所が表示されていた。そこならわかる。しばらく前に通過した多摩川沿いにゴルフ場の施設があったような記憶も残っていた。
ただ、「しばらく前に」なのである。自転車の巡航速度が30kmほどだから歩いていくにはいささか遠すぎる。というより、どこをどう迷えばこんな場所にたどり着けるというのか。駅も近くはないし、車に乗ってきた様子でもない。手ぶらで、携帯電話を持ち、見当違いな場所で、途方に暮れながら、ゴルフ場を探して歩いているのだ。
「ファー!ファー!!」
と彼に言ってみた。が、伝わらなかった。「ゴルフ場に着く前から派手にOBぶっ放してくれたな」というその意味が。まぁ冴えないジョークで気まずい表情をされるよりはマシだろうか、コンビニの地図を広げて「六郷ゴルフクラブ」への道順を示し、彼と別れた。
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そんなまともに英語ができない私が、今や人に海外通販の指南をして得意な顔をしているのだからおかしなものだ。USPSとの違いもろくにわかっていなかったのに、「UPSは高いねー」なんて減らず口を叩いたりしている。いい気なものだと苦い顔をされる人もいるだろう。「痛い目に遭ってしまえ」と藁人形にされる日もきっと近いはずだ。
そしてその日はひょっとしたら、あながち早くやってきてしまうのかもしれない。ガブリエルとの闘いの傷がまだ癒えないというのに、あの抗争の発端をつくった「アーク厨」の同僚が、こんなメールを寄越してきたのだ。本人の承諾も得ず、ここに全文を転載する。
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これいけますかね?
http://www.sportsnett.no/products.shtml?ARC70
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以上だ。
遠慮も気遣いもなく、いきなり「いけるか?」である。つまり、「代わりに注文お願いね」という意味だろう。ガブリエル越えからえらくハードルを上げてきたものだ。ただでさえステレオタイプな私は、この全く縁のないノルウェイという国に対して、「バイキング」あるいは「サーモン」というイメージしか持たない。かの小説だって、本題はノルウェイと何ら関係ないのだ。
彼にとっての六郷土手と、私にとってのノルウェイと。未知の領域という線で結ばれるなら、彼が無事に「六郷ゴルフクラブ」へたどり着けたことを、私は願うばかりなのである。
ファー!ファー!!ノルウェイ語わかる人いたら教えてください。
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